老犬の排尿や排便の調子が悪くなり、病院で診察してもらったら前立腺肥大と診断されたというご相談をよくいただきます。
去勢手術を勧められても、麻酔を使うことにリスクがあったり、高齢のなので手術をすることにも危険が伴うため、迷っている飼い主様は多いですね。
この記事では、老犬が前立腺肥大と診断された時、飼い主として知っておきたいことについて説明していきます。
老犬が前立腺肥大と診断された時に飼い主として知っておきたいことには次の5つがあります。
順番に見ていきましょう。
前立腺肥大の程度によっては改善することは十分可能です。
治療法には以下のようなものがあります。
去勢手術は、前立腺肥大の根本的な治療法です。
精巣を摘出することで、雄性ホルモンの分泌が抑制され、前立腺が萎縮していきます。
去勢手術は、最も有効な治療法ですが、高齢犬や持病のある犬の場合、手術のリスクが伴うため、内科療法で対応する方が適切な場合もあります。
去勢手術のメリットとデメリットには、以下のようなものが考えられます。
睾丸が取り除かれることによって雄性ホルモンのレベルが下がり、以下のようなメリットが期待できます。
@:性ホルモンが原因となる病気の予防
例:
A:問題行動の抑制
例:
B:繁殖の抑制
多頭飼いでオス犬とメス犬がいる場合、望ましくない繁殖を防げます。
特に短頭種犬は他の犬種に比べて元々呼吸器系に問題が起こりやすく、全身麻酔中に呼吸困難になりやすいので注意が必要です。
去勢により基礎代謝が落ちるので、手術前と同じ量を与えてしまうと肥満になる可能性が高くなります。手術後は肥満しないよう注意が必要です。
雄性ホルモン(テストステロン)は骨の形成を促進し、骨密度を維持する働きがあるので、去勢手術によってテストステロンの生産が無くなると骨密度が低下し、骨粗鬆症などの骨の健康問題が発生する可能性があります。
また、雄性ホルモンは筋肉の成長や維持に重要な役割を果たしているため、老犬の筋力が低下し、活動能力や運動能力が低下する可能性があります。
去勢による雄性ホルモンの減少は老犬の生活の質や健康に影響を与える可能性がありますので、手術後は適切なケアが必要です。
老犬に去勢手術を受けさせるかどうかは、症状の度合いや今後どのように過ごさせたいかによって異なります。メリットとデメリットを慎重に比較検討し、獣医師と相談することが重要です。
去勢手術が難しい場合は、内科療法が次の治療法の選択肢になります。
内科療法とは、薬を用いて症状を改善し、前立腺の肥大を進行を遅らせる治療法です。
外科手術に比べて身体の負担が少なく、高齢犬でも比較的安全に行うことができます。
内科療法に使われる薬には、以下のような方法があります。
前立腺の肥大を改善し、症状を緩和することができます。
老犬の前立腺肥大の治療法は、犬の年齢、健康状態、症状の重症度などを考慮して、
獣医師とよく相談して決めることが大切です。
病院での治療に加えて、自宅でのケアも老犬にとって非常に大切ですね。
前立腺肥大の老犬に飼い主が自宅でできることには、以下のようなものがあります。
水分を十分に与える:
十分な水分を摂取することは、前立腺の健康を維持する上で重要です。常に新鮮な水を提供し、水分摂取を促進しましょう。
排尿しやすい環境を整える:
トイレは、犬が落ち着いて排尿できる場所に設置しましょう。また、トイレの床は滑りにくい素材にするなど、犬が排尿しやすい環境を整えましょう。
また、ストレスは症状を悪化させる可能性がありますので、できるだけストレスのない環境で過ごせるように、静かで落ち着ける場所を用意してあげましょう。
寒暖差や急激な温度変化は避け、快適な室温を保つことも大切です。
適度な運動を促す:
適度な運動は、犬の健康維持に欠かせません。前立腺肥大の老犬の場合でも、無理のない範囲で運動させることが大切です。
暑い日や寒い日には、散歩時間を短くしたり、日陰を選んで歩いたりするなど、天候や犬の体調に合わせて調整しましょう。
感染しやすい部分のケア:
排尿後は、排尿器周辺を清潔に拭き取り、感染症を防ぎましょう。
定期的な診察を受ける:
前立腺肥大の管理には、定期的な病院での診察が必要です。
愛犬の様子を注意して観察し、異常を感じたら早めに病院で診察を受けるようにしましょう。
症状のモニタリング: 愛犬の様子をよく観察し、体調の変化に注意しましょう。
排尿困難、血尿、頻尿、排尿痛、便秘などの症状があれば、早めに獣医師に相談しましょう。
適切な治療と自宅でのケアによって、症状をコントロールし、愛犬の生活の質を維持することができます。
愛犬のためにできる限りのことをし、少しでも快適に過ごせるようにサポートしてあげましょう。
前立腺肥大の老犬に何を食べさせるかは、重要な治療法の一つです。
食事によって、症状を改善できたり、反対に症状の悪化を招くこともありますので、
獣医師のアドバイスを受けることが大切です。
以下のポイントも押さえておきましょう。
1. 食物繊維を多く含む食べ物
理由:
便秘は、前立腺肥大の症状を悪化させる可能性があります。
植物繊維を多く含む食べ物は、腸内環境を整え、便秘の予防、解消に役立ちます。
食物繊維を多く含む食べ物には以下のようなものがあります。
2.ビタミン、ミネラルを含む食べ物
理由:
ビタミンとミネラルは、身体の各機能が順調に働くために重要な働きをしています。
下記の食品を組み合わせて、毎日の食事でビタミンとミネラルをバランスよく摂取させることが大切です。
ビタミン、ミネラルを含む食べ物の例:
3. 低脂肪でタンパク質を多く含む食べ物
理由:
低脂肪のタンパク質は、健康維持に必要なアミノ酸を豊富に含んでいます。
老犬は食が細くなりがちですので、身体の基礎となるタンパク質が不足しないように気を付けてあげましょう。
低脂肪でタンパク質を多く含む食べ物の例:
1.高脂肪食品
理由:
脂肪の過剰摂取は、ホルモンバランスを乱し、前立腺肥大の悪化を招く可能性があります。
高脂肪食品の例:
2. 塩分が多い食べ物
理由:
塩分の過剰摂取は、体内に水分を溜め込み、排尿困難を悪化させる可能性があります。
塩分が多い食べ物の例:
加工肉:
缶詰:
3.糖分の高い食べ物
理由:糖分の高い食べ物を継続的に食べさせると、愛犬の肥満につながります。
肥満は、体重増加をまねき、糖尿病をはじめ様々な病気の原因につながるリスクがあります。
愛犬におやつを与える際は、糖分が多く含まれていないか注意して食べさせましょう。
糖分の高い食べ物の例:
前立腺肥大の老犬の健康を考える上では、バランスとともに、前立腺への影響を考えた食事を与えることが重要です。
獣医師と相談しながら、どのようなものを与えるかを検討すると良いでしょう。
運動は、前立腺肥大の症状を改善し、老犬の健康状態を維持するために重要です。
しかし、老犬は体力や筋力が衰えているため、無理のない範囲で運動させる必要があります。
運動には次のような効果が期待できます。
運動の種類:
散歩: 前立腺肥大の老犬にとって最も簡単で安全な運動です。
遊び: 犬が好きな遊びで体を動かしましょう。ボール遊びや引っ張りっこなど、犬が楽しめる遊びを選びましょう。
水泳: 水泳は、関節への負担が少ない全身運動です。愛犬が泳ぐのが好きな場合、暑い時期に川や海で泳がせてあげましょう。
運動をさせる際の注意点:
サプリメントも上手に使えば、老犬の症状改善と健康に役立ちます。
老犬の健康状態や症状の度合いによってサプリメントを試してみましょう。
ビタミン、ミネラルは身体の機能が正常に働くために大切な栄養素です。
日々消費されるため、不足しがちな栄養素ですので、先ずは、ビタミン、ミネラルが不足しないように気を付けてあげましょう。
理想的には食事から摂取するのが一番ですが、難しい場合はサプリメントを上手に利用しましょう。
おすすめのビタミン、ミネラルサプリメント
@:みつばち花粉
みつばち花粉は、パーフェクトフードとして知られている自然食品で、ビタミンやミネラルをはじめ様々な栄養素がバランスよく含まれています。
食が細くなりがちな老犬におすすめです。
A:マルチビタミン、ミネラル錠剤
ビタミンとミネラルを複数含むサプリメントです。ビタミンは化学合成によって製造された合成ビタミンである場合が多いようです。
B:亜鉛
亜鉛は、前立腺の健康維持に必要なミネラルと言われています。
過剰摂取すると副作用を引き起こす可能性がありますので、獣医師の指示に従い、適切な量を与えましょう。
いずれのサプリメントを使用する際も、愛犬に合うかどうか慎重に始めましょう。
心配な場合は必ず獣医さんに相談してから使用するようにしましょう。
老犬が前立腺肥大と診断されると、去勢手術を含め様々な心配が出てきます。
ここは慌てず、どのような対策があるのかをじっくりと考えましょう。
獣医師に相談するのはもちろん、飼い主様ご自身でも色々な可能性を調べることが肝心です。
この記事が、少しでもお役に立てましたら幸いです。