前立腺肥大症で悩まれている方は、どうにもならない場合は手術も考えておく必要もあるかもしれません。
その時、膀胱に問題がある場合、前立腺肥大の手術をしても排尿問題が改善しない可能性があります。
どういうことか、以下説明します。
手術後に後悔しないよう、膀胱の働きについても知っておきましょう。
前立腺肥大の手術を受ければ、肥大による尿道の圧迫が解消され尿の流れもスムースになります。
しかし、膀胱には以下のような排尿に関して大きな役割がありますので、膀胱の働きが正常かが重要になります。
膀胱の2つの重要な役割:
@:尿を溜めておく働き(蓄尿)
A:尿を排出する働き(排尿)
です。
例えて言えばダムの働きと同じで、被害が出ないように一定の量を貯水(蓄尿)しておき、
一定以上溜まったら排水(排尿)する働きをしています。
それぞれ見ていきましょう。
腎臓で作られた尿は、尿管を通じて膀胱に溜められます。
尿が溜まって行きますと膀胱が伸びて広がり、一定量溜まると神経によって脊髄にある
排尿中枢へと伝達されます。
ここで自動的に排尿されるかといえば、そうではなく、膀胱の下にある筋肉
(外尿道括約筋)を自分の意思で収縮させ排尿を我慢することが出来ます。
※内尿道括約筋=不随筋 自分の意志で動かすことのできない筋肉
※外尿道括約筋=随意筋 自分の意志で動かすことのできる筋肉
膀胱に尿を溜めておく機能がなければ、一日中尿が漏れっ放しということになりますので、とても大事な働きとなります。
蓄尿機能に問題が無ければ一日に何回もトイレに行く必要もなく、仕事や外出などが安心してできますね。
しかし、次のような問題があれば蓄尿機能が正常に働くことが出来なくなる可能性があります。
● 認知症
● 脳血管障害
● 脊髄障害
● 過活動膀胱
など。
膀胱の機能は神経によって調整されていますので、神経系に何らかの問題がある場合、
蓄尿機能に影響が出る場合があります。
これらの症状がないか確認しておきましょう。
尿が膀胱に一定量溜まると神経系を通じて脳に信号が行き、尿意を感じることになります。
尿意を感じたらトイレに行き排尿するわけですが、以下のような問題があると上手く排尿することが出来なくなります。
尿意を感じてトイレに行き、いざ排尿となった時、尿が思ったように出ない場合があります。
前立腺肥大以外でこの様な症状が出る場合、以下のようなものが膀胱の排尿機能を阻害している可能性があります。
● 脊椎疾患
● 椎間板ヘルニア
● 腰部脊椎管狭窄症
● 糖尿病性末梢神経障害
など 。
以上の症状はいずれも神経系の働きを阻害するものです。
尿意を感じてトイレに行きますが、その時にどういったことが身体の中で起こっているかといいますと、次のような流れになります。
@:膀胱からの刺激が、脊髄にある排尿中枢へと伝達されます。
↓
A:大脳で「排尿しよう」と決めると、膀胱の筋肉を収縮させ、膀胱の出口付近にある膀胱の出口を開け閉めしている内尿道括約筋を緩めます。
↓
B:さらに、内尿道括約筋の下にある外尿道括約筋を弛緩させ、
↓
C:最後に、腹圧をかけることによって排尿に至ります。
この様に、排尿機能も神経系の働きが関与しているため、神経系に何らかの疾患がある場合、排尿に障害が出る可能性があります。
これまで見てきましたように、膀胱の機能は神経系によって調整されていますので、神経系の疾患を持たれている場合、前立腺肥大の手術をしても排尿に問題が残る可能性があります。
せっかく前立腺肥大の手術をしたのに排尿問題が解決されないということが無いよう、膀胱についてもしっかり検査してもらいましょう。